乱視用コンタクトについて
乱視用のコンタクトは普通のタイプと何が違うのですか?
乱視用コンタクトとは、1枚のレンズの中に近視や遠視を矯正する度数と、乱視を矯正する度数があるレンズの事を言います。従ってコンタクトレンズのデータも通常のタイプとは若干異なります。現在は多くの人が使用していますが、近視や遠視だけのコンタクトを通常タイプとするならば、乱視用コンタクトは特殊レンズに該当することになります。
乱視用コンタクトのデータの意味は?
乱視用コンタクトレンズをソフトコンタクトのデータを元に説明をしていきます。
①BC8.6 / ②SPH-3.00 / ③CYL-1.25 / ④AXIS180 / ⑤DIA14.0
①のBCとは?
ベースカーブのことで、角膜の曲がり具合(カーブ)に合わせたレンズのデータです。現在、販売されている乱視用ソフトコンタクトの中で、使い捨てコンタクトレンズの場合はBCが1種類のみで選択はできないようになっていますが、長期装用型のソフトコンタクトはBCが何種類かに分かれており、選択できるようになっています。
②のSPH(スフェアー)とは?
球面レンズのことで近視や遠視を矯正する度数です。近視を矯正する度数には、マイナス(-)が、遠視を矯正する度数にはプラス(+)の表記が付いています。もし乱視だけと言う人がいたら、SPHは±0.00ということになります。
⑤のDIAとは?
ここで先にDIAの説明を先に致します。DIAはレンズの直径のことです。多くのレンズは14.0mm~14.5mmですが中にはそれ以外のレンズもあります。DIAもBCと同様、使い捨てコンタクトの場合は各メーカー1種類しかないため選択はできませんが、長期装用型は選択できるようになっています。
ここからは乱視用コンタクトにしか存在しないデータの説明です。
③のCYL(シリンダー)とは?
乱視を矯正するレンズのことで、円柱レンズと呼ばれています。SPH(球面レンズ)がどの方向にも均等に度数が入っているのに対して、円柱レンズはある一方向に度数が入っており、それと垂直に交わる方向には度数が入っていません。
「乱視について」の項目で説明をしていますが、乱視の検査の際に、乱視表と言う縦横斜めの長さ・濃さ・太さが全て均一の表を見せられます。乱視のない人がこの表を見ると、きれいな放射線の表にみえますが、乱視のある人がこの表を見ると、線に濃淡が出てくるのです。
そしてその濃淡も見る人によって場所も異なるのです。時計の針で例えて言うなら、「6時と12時」の線が濃く見えると言う人もいれば、「4時と10時」の線が濃く見えると言う人もいます。そのことからわかるように乱視には人によって「方向」があるのです。
④のAXISとは?
乱視用のレンズを配置する位置を示すデータのことです。CYLつまり乱視を矯正する円柱レンズには、ある一方向に度数が入っており、それと垂直に交わる方向には度数が入っていません。その度数の入っていない方向を乱視軸度と言い、それをAXIS(アクシス:アキシス:アックス)と言うデータで示しています。
乱視は角膜や水晶体の歪みによって目に入ってきた光の曲がり方が異なり、焦点を結ばない目です。従ってCYLはその曲がり方のズレを埋める度数のことで、そしてどの方向にCYLを配置すればそのズレが解消するか、その配置する場所を示すのがAXISなのです。
ですからCYLとAXISは必ずセットで表記されるデータです。どちらが欠けても乱視用コンタクトは発注すらできないのです。
例:BC8.6/SPH-3.00/CYL-1.25/AXIS180/DIA14.0
上記のデータは、乱視用のCYL-1.25を軸度180°の方向にセッティングすることで、縦と横のカーブのズレ(屈折力の差)を修正します。これでズレが解消されましたので、その時点でこの人の目は近視だけの目になりました。あとはSPH-3.00で網膜よりも手前に焦点を結んでいたものを、正しく網膜上で焦点を結ぶようにするということなのです。
乱視用コンタクトは目の中で軸度はズレませんか?
メガネの場合はご承知の通り、鼻と耳の部分でメガネが固定されます。ですから適正な乱視軸度に合わせた乱視の度数が、大きくズレることがないため安定した見え方を得ることができます。
しかし乱視用のコンタクトの場合、目の中で固定されているわけではありませんから、レンズが回転してしまいます。そうすれば乱視の乱視軸度がズレてしまい、良好な視力が得られなくなってしまいます。
ですから乱視用ソフトコンタクトの場合、乱視軸度が適正な方向に安定するようメーカーごとに特殊なデザインが施されているのです。下記はその代表的なデザインです。
プリズムバラスト
プリズムバラストデザインは、レンズの上の方を薄く、下の方に向かって徐々に厚さが増すように作られています。厚さがあればその分重量も増しますので、それが重りとなって下方に向きます。
またまばたきをする際に上まぶたの圧力で厚みのある方が先に飛び出ようとする特性があるため、厚い方が自然と下方向に来るわけです。
ダブルスラブオフ
ダブルスラブオフデザインは、レンズの上下方向が薄く、左右方向が厚い形をしています。レンズの薄い部分を上下のまぶたと眼球で挟み込んでレンズの回転を抑えます。
後面トーリック法
レンズの後の面、内側で乱視を矯正するタイプのレンズです。乱視の原因は黒目の表面のゆがみですから、完全にマッチさせることは困難だとしても、ある程度までその黒目のゆがみにレンズの後面を合わせることで、通常の球面タイプのレンズよりはコンタクトレンズが収まりよくなるため、レンズの乱視軸度の安定性や矯正視力のアップが可能になります。
乱視用コンタクトのメーカーを変更しても大丈夫ですか?
今まで愛用していたコンタクトレンズのメーカーを変更する理由はそれぞれあります。例えば「もう少し安いレンズにしたい」「グレードアップしたい」「販売が終了してしまった」等。
コンタクトレンズはメーカーや素材特性、レンズデザインによっても良し悪しが変わります。決して「有名メーカーのレンズだから」「酸素透過性が高いから」いいというわけではありません。一言で言うなら「レンズと装用する人との相性の良し悪し」に尽きます。
乱視用コンタクトの場合、通常タイプの近視や遠視だけのレンズとは異なり、乱視度数や乱視軸度が関わってきます。乱視には人それぞれ矯正するべき方向があり、その方向が目の上でうまい具合に合わないと良好な視力を得ることはできません。
ですから乱視用コンタクトは、レンズを装用すると丁度いい位置に乱視度数が安定するようデザイン的な工夫がされています。
しかし乱視軸度を安定させるためのデザインはメーカーによって異なりますので、例えばボシュロムの乱視用コンタクトの見え方が良かったからと言って同じデータでジョンソンエンドジョンソン社のレンズに交換しても同様に見えるかと言えば、必ずしもそうなるとは限らないのです。メーカーを変更すると言うことはそういうことなのです。
それが乱視用コンタクトや遠近両用コンタクトなどのように特殊なレンズになると尚更なのです。ですから御心配な方はやはり検査を受診してからメーカーや種類を変更することをおススメいたします。
乱視がある人はみんな乱視用コンタクトを使用するのですか?
眼科さんで検査をすると、乱視の全くない人は意外と少ないものです。多くの人が近視と乱視、又は遠視と乱視の両方があると言う人が多いのです。
では乱視のある人はみなさん乱視用コンタクトを装用しているかと言えば、そんなことはありません。軽度の乱視であれば、矯正をしなくても視力に支障をきたしませんし、自覚としても不自由さを感じる人は少ないと思います。
度数で言えばCYL-0.25~-0.75位まででしょうか。乱視がある=乱視用コンタクトではありません。乱視用コンタクトは通常タイプと比較するとお値段も割高です。
コンタクトレンズ選びにおいては「予算」も大きな要素です。通常タイプで満足する視力が得られるのであればそれに越したことはありません。
しかし・・・・・
仮に視力検査で1.0が見えたとしましょう。しかし乱視のない人の1.0の見え方と乱視のある人の1.0の見え方は異なります。要は同じ1.0が見えていてもその鮮明度、クリア感は乱視のない人とある人とでは異なるのです。
1.0が判断できたとしても、よりはっきりとした、クリアな1.0を望む人であれば、やはり乱視用コンタクトを選択したほうがいいと言う場合もあります。つまり一言で言えば「見え方の満足度」と言うことになってきます。
ところがCYL-1.00を越えてくると、やはりしっかりとした矯正をしなければ見え方自体に影響を及ぼすケースが多いようです。ただ個人差はありますので、乱視用コンタクトにした方がいいか、通常のレンズでも問題ないかは検査を受診して相談して決定する必要があります。
乱視用コンタクトのデメリットは何ですか?
通常タイプのソフトコンタクトには乱視の矯正力はありません。しかし乱視用のソフトコンタクトにはそれがあるのです。一昔前は乱視がある=ハードコンタクトでした。
しかしハードコンタクトには「異物感を慣らさなくてはならない」、「激しいスポーツには不向き」などの問題がありました。そのような人たちにとって、乱視が矯正できるソフトコンタクトが魅力的に感じないわけがありません。
しかし乱視用コンタクトも万全なコンタクトではありません。欠点がいくつかあるのです。それをこれからご紹介していきます。
コスト的には割高
乱視用コンタクトは通常タイプとは異なり、球面度数(近視や遠視を矯正するレンズ)以外にもCYL(乱視を矯正する度数)が入っているため、通常タイプのコンタクトレンズよりも1箱当たりの価格帯は割高になっています。
在庫を持たない店舗やサイトが多い
使い捨てコンタクトレンズの場合であれば多くのレンズがBCとDIAが1種類しかありませんので、あとは度数×在庫数でいいのですが、乱視用コンタクトの場合、球面度数と乱視度数、乱視軸度と言う3種類のデータが存在しますので、その組み合わせを考えていくと在庫数がどんどん膨らんでいきます。
在庫を多く持てばそれだけリスクも伴いすので、多くはお客様からの注文を頂いてからメーカーに発注しているのが実情です。
アレッズコンタクトでは下記の乱視用コンタクトは一部在庫を保有しています。
お急ぎの方はお気軽にお問い合わせくださいね。
乱視軸度がズレると見えにくくなる
乱視の矯正にとって一番大切なのは、CYL(乱視度数)が、AXIS(乱視軸度)の位置にしっかりと安定して位置しているかどうなのです。
この位置がまばたきの影響や目の動きでズレてしまうと見えづらくなってしまうのです。そしてそれはCYLの度数が強ければ強いほど顕著になります。
もしCYLのAXISが安定しないと言うことであれば、残念ながらそのレンズとの相性が悪いため、他の乱視用コンタクトに変更したほうがよさそうです。
レンズはメーカーによってデザインも異なるため、こちらのレンズでは安定しなくても、メーカーと商品を変更すれば安定すると言う場合もあります。眼科さんでしっかりと確認してもらうことをおススめ致します。
片眼だけ乱視があり、もう片眼は近視だけの場合はどうしたらいいですか?
上記にも説明したとおり、もし乱視の程度が-0.75D程度であれば、両眼共に通常タイプのコンタクトレンズにして、左右のバランスをとってもいいかもしれませんね。
もし満足いく視力が得られないようであれば、またはそれ以上の乱視度数があるのであれば、片方を通常タイプのコンタクトレンズ、乱視のある方を乱視用コンタクトレンズにすれば問題はありません。
ジョンソンエンドジョンソンのアキュビューシリーズ、ボシュロムのメダリストシリーズ、アルコンのデイリーズアクアコンフォートやエアオプティクスシリーズには通常タイプと乱視用タイプのレンズが両方販売されています。
乱視用コンタクトを取り扱う上での注意点はありますか?
乱視用コンタクトは、乱視軸度を目の上で安定させるために「プリズムバラスト」や「ダブルスラブオフ」などメーカーごとに特殊なデザインを採用しています。そのため、通常タイプのコンタクトレンズとは異なり、レンズの厚みがところどころ異なります。
ですから2ウィークタイプのコンタクトを洗浄する際には気を付けて洗浄しないと破損してしまうこともあるのです。力加減には十分注意しましょう。
もし破損することが心配な人は、こすり洗い不要のケア用品「エーオーセプトクリアケア」をおススメいたします。
乱視用コンタクトの商品名
★ワンデータイプ
●ワンデーバイメディックス(トーリック)
●ワンデーメニコントーリック
●バイオトゥルーワンデートーリック
★2ウィークタイプ
●フレッシュフィットコンフォートモイスト乱視用
●2ウィークメニコンプレミオトーリック
●マンスウエアトーリック
★長期装用型ソフトコンタクト
★ハードコンタクト
●ニチコンEX-UVトーリック
●ハイサンソαトーリック