遠近両用コンタクトとは?
遠近両用コンタクトのニーズ
日本では、1970年代からソフトコンタクトが、1980年代から酸素透過性ハードコンタクトが、そして1990年代以降使い捨てコンタクトが普及していきました。
従ってコンタクトレンズが普及し始めた頃から愛用している人たち、例えば仮に20歳からコンタクトレンズの装用を開始した人であれば、既に50代、60代、70代になっている訳です。
50代、60代、70代の年齢と言えばほぼ「間違いなく」と言ってもいいほど「老眼」の症状を自覚していると思われます。
老眼は「新聞や雑誌に目を通した時に」、「電車内でスマホを見ている時に」、「仕事で書類に見た時に」などちょっとした時に「手元のものが見えにくい、かすむ」と言った症状です。
老眼に気付き、一般的に最初にすることは「老眼鏡を掛ける」と言うことでしょうか?
今の時代、スマホは必須アイテムです。スマホが見えないことは大変な問題なのです。若者たちの間でも「スマホ老眼」などという言葉もあるほどです。
ところが長年、コンタクトレンズでの生活をしてきた人たちにとってメガネを掛けるという行為そのものに抵抗を感じる人も数多くいますし、ましてやそれが「年齢を感じさせる」老眼鏡であれば尚のことかもしれません。
少し前までは老眼世代のコンタクトレンズなど注目すらされていませんでした。
何故ならコンタクトレンズユーザー=若い世代と言う考えが一般的だったからです。
しかし40代、50代以上のコンタクトレンズユーザーが当たり前のようになった昨今、嫌でも老眼世代の人たちが不自由なく手元を見ることのできる遠近両用コンタクトのニーズは高くなります。
このような背景の中で、既に20年ほど前には遠近両用コンタクトレンズも存在はしていましたが、日本での普及率は欧米諸国と比較して低く、2020年時点で4~5%程度でした。ちなみに欧米諸国では遠近両用コンタクトレンズの処方割合が15~30%に達しているようです。
しかし日本でも遠近両用コンタクトのニーズは緩やかではあるものの高まってきています。
遠近両用コンタクトとは?
遠近両用コンタクトは1枚のレンズに遠くを見る部分と近くを見る分の度数が配置されているコンタクトレンズです。通常タイプのコンタクトレンズとは異なりますので、特殊レンズと言っても過言ではありません。
老眼鏡を掛けなくても手元の物が見えるという点に誰もが魅力を感じるわけです。中には職業柄、老眼鏡を掛けることができない職業に就いている人もいますので、遠近両用コンタクトの存在意義は大きいと言わざるを得ません。
遠近両用コンタクトの加入度数とは?
遠近両用コンタクトには通常のコンタクトレンズには記載のない「加入度数:ADD」と言うデータがあります。そのデータは簡単に言ってしまえば老眼鏡に該当する度数です。
遠近両用コンタクトの加入度数についてはこちらをクリック!
遠近両用コンタクトのタイプ
遠近両用コンタクトには構造と言う点で大きく分けると二つのタイプのレンズがあります。バイフォーカルタイプとマルチフォーカルタイプです。
バイフォーカルタイプとは?
バイフォーカルタイプは1枚のレンズの中に遠用部分と近用部分の2つの焦点があります。そのため「遠くだけ」、「近くだけ」の1点を見るのならマルチフォーカルタイプよりも満足度の高い視力を得ることが出来ます。
ただマルチフォーカルタイプのような移行部分がないため「遠くを見ることが多い」とか「近くを見ることが多い」というような人にはいいのですが、遠くも近くもまんべんなく見たいというような人は、やや不便さを感じるかもしれません。
マルチフォーカルタイプとは?
マルチフォーカルタイプは度数がたくさん存在し、遠くの度数(近くの度数)から徐々に度数が変化していきます。つまり遠くを見る度数と近くを見る度数だけではなく、その中間を見る度数もあるレンズのことを言います。そのため、幅広く、まんべんなく見たいという人には良いかもしれません。しかしその分「遠く」、「近く」というように特化した見え方と言う点では、バイフォーカルの方に分があります。
現在、市場で販売されている使い捨てタイプの遠近両用コンタクトはほぼ「マルチフォーカル」タイプです。以前はバイフォーカルタイプのレンズもありましたが、現在は2ウィークメニコンプレミバイフォーカル位でしょう。他はいずれも販売が終了しています。
遠近両用コンタクトは見え方と言う点でも2つに分類されます。
交代視タイプとは?
交代視タイプは、呼んで字のごとく視線を交代(変える)事により遠くと近くを使い分けて見るレンズです。ハードコンタクトレンズにこのタイプのものがあります。
同時視タイプとは?
同時視力タイプは遠くも近くも一緒に見ているのですが、頭の方で見たい対象に自動的にピントを合わせて見るという方法でソフトコンタクトは同時視タイプを採用しています。
遠近両用コンタクトとの相性
遠近両用コンタクトは、1枚のレンズの中に遠用度数と近用度数が配置されているため、見え方も単焦点レンズ(近視や遠視だけを矯正するレンズ)とは異なり、レンズと装用者との相性が出てくる場合があります。
レンズそのものの素材特性やデザインとは別の部分で、遠くを見るための度数とお手元のものを見るための度数の配置によっても使用した感じが変わってくるからです。
遠近両用コンタクトの見え方
遠近両用コンタクトの見え方はどうなのでしょう?
満足度は個人差あり、その評価は様々です。
遠近両用と言うからには遠くも近くもバッチリよく見えるというイメージを持たれているい人が多いかもしれませんね。実際は「遠くもそこそこ」「近くもそこそこ」と言った方がいいかもしれません。
遠近両用コンタクトのご利用者のほぼ100%に近い人が、単焦点レンズ(近視や遠視を矯正するレンズ)からの移行です。単焦点レンズは遠近両用コンタクトとは異なり、1枚のレンズに1つの度数しかないため見え方も良好です。
それに対して遠近両用コンタクトは1枚のレンズの中に複数の度数が存在します。装着時には遠くにピントが合う所と近くにピントが合う所が同時に見えているのです。脳はその中でクリアに見えている像だけを認識し、ぼやけた像は抑制しようとします。
ところが完全にそれができるかと言えばそうではない場合もあります。そのため多少の慣れが必要になりますし、人によっては思った通りの見え方ではないとがっかりする人もいるのでです。
だから遠近両用コンタクト見え方は、「遠くもそこそこ、近くもそこそこ」という表現が一番しっくりくるかもしれません。
言い方を変えれば、遠近両用コンタクトは「見える範囲が拡がる」レンズなのです。遠近両用コンタクトをしばらく装用したあとで、単焦点レンズに戻したときに恐らく実感することになります。
「遠近両用コンタクトの方が手元が見やすい」と言うように。しばらく装用してみて初めて良さのわかるレンズと言ってもいいかもしれませんね。