バイオフィルムのこと
ひと昔前のソフトコンタクトレンズのケア
1991年、今から30数年前に日本国内で使い捨てコンタクトが初めて販売されました。
その後、使い捨てコンタクトが主流になるまではソフトコンタクトは、長期装用型レンズとして約1年半~2年間、ケアをしながら装用をしていました。
その時の消毒方法と言えば、ご存知の方もまだまだおられると思いますが、機器で熱を加えて煮沸、殺菌する消毒方法でした。その時の名残で「ソフトコンタクトはケアが面倒」と言うイメージが出来上がってしまったようです。
煮沸消毒の効果はとても高いものでしたが、その分レンズに与えるダメージも大きく、タンパク汚れの固着などに伴うレンズの変形や黄変などが問題になっていました。
レンズケースはと言えば、蓋の内側にパッキンが付いており、耐熱性に優れた丈夫なレンズケースで、頻繁に買い替えるという発想のなかった時代です。
しかし使い捨てコンタクトの普及に伴い、現在ではコンタクトレンズケースも、ケア用品を購入するたびに中に付属で添付されるようになりました。
煮沸で加熱もしないため、パッキンはなくなり、新しいケア用品を開封するたびにケースも新しく交換するというスタイルに変わりました。
その背景には「バイオフィルム」の問題があるのです。
バイオフィルムとは?
コンタクトレンズのケースに「取れにくい汚れ」や「しみ」や「ぬめり」を感じたことはありませんか?
長期間、使い続けたレンズケースの内側には、眼に見えない細菌が膜を形成することがあります。
これがバイオフィルムと呼ばれるもので、このバイオフィルムが消毒薬などから細菌が身を守る外壁になっているのです。一旦これができるとMPS(マルチパーパスソリューション:1本で洗浄・すすぎ・消毒・保存ができるケア用品)では全然消毒できません。
身近な例で例えると、台所のシンクなど掃除しないで放置しておくとヌルヌルしたヌメリが表面に付着してきますね。これもバイオフィルムの一種です。
レンズケースやレンズのぬめりは洗浄液で洗えば除去できると思われがちですが、バイオフィルムの状態になると完全に除去することが困難になります。
もし万が一、眼感染症の原因となる「ブドウ球菌」や「緑膿菌」が、バイオフィルムを作ってしまえば、慢性の炎症を繰り返すバイオフィルム感染症を起こしてしまうことがあります。そうなるとなかなか完治せず、非常に厄介なことになってしまうのです。
バイオフィルムの形成を防ぐために
せっかくコンタクトレンズをしっかりと洗浄し、消毒液に保存したとしてもその保存するケースが細菌に汚染されていたのでは意味はありません。
バイオフィルムが発生する原因は、コンタクトレンズケースを長期間使用することで、ケース内に汚れが蓄積されることですから、微生物の汚染を防ぐには、レンズケースは日々、水道水でキレイにすすぎ洗いをしてください。
特にふたと本体のかみ合わせ部分は汚れが溜まりやすいので注意してください。またケア用品を交換する時には、たとえレンズケースの見た目がきれいであっても新しいケースに交換するよう心掛けましょう。これはハードコンタクトにも同じことが言えます。